仏教講師という職業柄、色々な人と接するのですが、
つくづく思うのは、どの人も、それぞれの立場で、
一生懸命、頑張いるということです。
子供から、年配の方々に至るまで、、
「本当にご苦労様ですね。。」と言いたくなることが、
よくあります(^_^)
今回は、『名将言行録』にある、
「居眠り」が人の命を救った心温まる話を紹介します。
それは、徳川幕府2代将軍・秀忠(ひでただ)のタヌキ寝入りのこと。
ある日、秀忠は、家臣の野間を呼びました。
野間は不器用で目立たない男でしたが、
とても律儀で、黙々と使命を遂行するので、
秀忠は厚い信頼を置いていました。
日頃の働きへの褒美の意味で、鶴の吸い物をご馳走しようとしたのです。
野間にとっては、大変名誉なこと。
しかし、将軍の前へ出た時から、緊張して、体がカチンカチンになり、
ゆっくりと味わえるような精神状態ではありませんでした。
そこへ膳が運ばれ、吸い物のお椀が載っていました。
平伏している野間に向かって、秀忠は、
「さあ、遠慮しないで食べるがよい」
と優しく声をかけました。
「はっ」と答えた野間は、お椀を手に持ち、
押し頂こうとしましたが、あまりにも高く持ち上げすぎて、
頭上でバランスを崩し、汁をこぼしてしまったのです。
「あっ、熱っ!」
熱湯が首筋から背中へ流れ込んでいきました。
主君の前でこんな失態を演じて、どう責任を執るのか。
やけどをじっと我慢しながら、恐る恐る秀忠の方を見ると。。。
なんと秀忠は、いつの間にか脇差しを頬杖にして、
こっくりこっくりと居眠りをしている。
周囲の者も機転を利かせ、
将軍が寝ている間に台所から別のお椀を運んできて、
「どうぞ、ごゆっくり。。」
と小声でささやきました。
野間が、今度こそ、落ち着いて吸い物を食べ始めると、
ようやく秀忠が目を覚まし、何も知らないふりをして、
「ああ、つい、うとうとしてしまった。
日頃の疲れが出たのかな。
おう、そうであった。。
どうだ、野間。吸い物の味は?
その鶴は、わしが狩りで取ってきた鶴だぞ」
と語りかけました。
野間は一徹な男だけに、
この失態を苦に切腹するだろうと、秀忠は読んでいたのです。
「はっ、ことのほか。。」
それ以上は言葉になりません。
野間は、平伏しながら、主君の思いやりを肌で感じ、
男泣きに、泣いていました。
将軍・秀忠の意図を察して、そっと吸い物を交換し、
武骨者の失敗をかばった人たちの優しさも心にしみます。
身分の差がやかましい封建時代にさえ、
こんな温かいエピソードがありました。
みんな、それぞれ頑張っているのですから、、
人のミスを見て笑ったり、あざけったりするのではなく、
落ち度があればそれをカバーし合う、、
心の通った人間関係を築いていきたいものです(*^_^*)
日本のお釈迦様と言われる聖徳太子は、
十七条の憲法の最初に、「和するを以って貴しと為す」
と仏教精神を教えられました。
人を責めるのではなく、人を思いやり、
何か自分にできることはないか、と「和」する努力こそ、
仏教が説く大事な心がけ。
心してゆきたいと思います(^_^)